White Period

アリオスの部屋で少しだけなら大丈夫だろうとお酒を飲ませてもらった
アンジェリークは…案の定、すぐに酔ってしまった。
そして事態は2人が思ってもみなかった方向へと進んでいった。


もう何度目か分からないほどの官能的なキスに
アンジェリークは頬を染めたまま微笑んだ。
「アリオス…しよ?」
「あ?」
不覚にもその意味を図りかねて、アリオスはつい聞き返した。
「イヤ?」
それをノーサインだと取ったアンジェリークはしょんぼりしたように呟いた。
「やっぱり…私なんかじゃ…」
「バカ、そんなんじゃねーよ」
泣き出しそうな彼女の瞼に口接けた。
「お前がそんなこと言うのは初めてで…驚いただけだ」
宥めるようにキスをして…
しかしその手はすでにキャミソールの下で鍵を外していた。

鍵を外してキャミソールをたくし上げ、露わになった白い肌に
手を這わすと甘い声が洩れた。
「ん…ぁ…」
出会った頃よりは確実に育った胸とその反応にアリオスは口の端を上げる。
「アリオス…」
誘うように呼ぶ唇を塞いで、彼の手は少女を煽り続ける。
零れる溜め息さえ奪うようなキスにアンジェリークの瞳が潤む。
力の抜けてしまった身体を支えられなくてアリオスに縋るように抱きついた。
そのやわらかな身体はすでにアルコールのせいで熱い。
「アリオス…なんか、私…ヘン…」
酔った頭では上手く言えなくて、言葉が見つからなくてただそう呟いた。
「ヘンじゃねぇ。めちゃくちゃかわいいぜ?」
喉で笑ってアリオスはアンジェリークの頬にキスをした。
「…そう、なの?」
きょとんと首を傾げていた少女は彼の言葉に嬉しそうに微笑む。
「アリオスにそう言ってもらえると嬉しい」
そんな彼女は本当に食べてしまいたくなるほど可愛らしい。
そして美味しく頂くために彼女をベッドへと押し倒した。

衣服が上半身に引っかかっているままの華奢な身体を組み敷いて
首筋、肩、胸元…上から辿るように所有の証をつけていく。
「は…アリ、オス……んっ…」
彼の首に腕を回してもっと側に来てほしいと引き寄せる。
「キス、して…」
いつもより積極的な願いにアリオスは微笑んで応える。
柔らかな肌にキスするのも悪くないが、こちらの方が楽しい。
じゃれるように唇を重ね、次第に舌を絡ませる。
「今日は楽しませてくれそうだな」
濡れた少女の唇をなぞって微笑んだ。その瞳は獲物を前にした獣のそれだった。

「っ…」
胸の頂きを口に含まれて、アンジェリークはびくりと身体を竦める。
すでに反応しているそれに歯を立てると面白いように反応が返ってくる。
「やっ…いじわる、しないで…っ」
片方は口で。片方は指先で。
絶えず与えられる刺激にアンジェリークは息を切らして涙を零す。
「意地悪?」
残酷なほど優しい笑みでアリオスは聞き返す。
「こんなに丁寧に愛してやってんじゃねぇか」
その執拗なまでの丁寧さが少女を焦らしているのを百も承知でとぼけてみせる。
「そ…だけど…でも、だって…」
たとえ数えきれぬほど身体を重ねて、ある程度慣れたとは言え
全てをアリオスに教え込まれたアンジェリークは彼に言い返す言葉を知らない。
困った顔をしてねだる瞳を向けるしかできない。
それが彼の欲望をさらに煽る。
幸か不幸か…少女本人にその自覚はないが。

「焦らなくてもちゃんとやるよ」
欲しがるものは与えてやる。ただその過程を楽しませてもらうが。
ミニスカートの中へと侵入させた指先が太腿をなぞる。
それだけで閉じかけた脚を従順に開かせてしまう。
最奥にたどりついた指先が軽く触れただけで、少女の身体が小さく震えた。
「あっ…アリオス…」
「なんだ、待てないのか?」
「ん…」
いつもは真っ赤になって首を横に振るのに、恥じらいながらも微かに頷く。
それがたまらなく可愛くて…。
その新鮮な仕種に、これもアルコールのおかげかとアリオスは内心考える。
時々飲ますのもいいかもしれない、と。
「まぁ、準備は出来てるみてぇだがな…」
直に触れると溶けた入り口が簡単に長い指の侵入を許す。
「っ!」
細い身体がしなやかにのけぞる。
濡れた花弁を、熱を持ったさらにその奥を、飽くことなく愛撫する。
かき混ぜる淫らな音にアンジェリークは頬を染めながら甘い声を洩らす。
アリオスは邪魔なミニスカートを取り去り、その蜜を味わった。
柔かな花弁を舐め上げ、蜜を掬い取る。
彼女の奥まで味わうようにそのまま舌を侵入させる。
「きゃっ…あ」
びくんと身体を震わせてアンジェリークが悲鳴を上げた。
「や…だめぇ…」
軽く歯を当てられてぽろぽろと涙を零す。
「アリ、オス…やぁっ…おねが……」
与えられる刺激に耐えきれなくて、アンジェリークが訴えた。
これ以上ないほど感じているのに満たされたいと思う。

自分もいい加減少女が欲しいし、もうそろそろ『お願い』を
きいてもいいかと思ったがふと思いついた欲望を言葉にしてみる。
「いいぜ。お前もしてくれたらな」
「え…?」
踊り疲れた少女は上気した頬をさらに染めた。
おそらく意味は通じている。
以前この状況になった時、放っておけば1時間でも2時間でも
凍りつきかねない様子だった。
だから冗談だと笑って見逃してやったのだが…。
「私が…?」
真っ赤な顔で呆然とアリオスの瞳を見つめる。
前みたいに冗談だと言ってくれるのを期待して。
「ああ。じゃないとやらねぇ」
押せば流されそうだと読んだアリオスは微笑んだ。
それは紛れもない誘惑。

「どうする?」
恥ずかしがり屋な少女に酷かもしれない要求をしているくせに彼女を
抱き起こした腕は優しくて、重ねた唇も甘かった。
「…あのね…。どうすればいいのか、分からない…」
互いの唇が離れたあと、アンジェリークは俯きがちに呟いた。
「本当はね…してもらってばかりじゃなくて…私も…その…」
顔を見つめながらなんてとても言えないから、抱きついて言った。
彼の首筋におずおずと囁いた。
「アリオスにも……してあげたい…って…思っては、いるんだよ…?」
「へぇ…」
当たる胸の柔らかさと滑らかな背中を撫でる感触を楽しみながら
アリオスは口の端を上げる。
その笑みを見たらアンジェリークはきっと前言撤回しただろう。
それは追いつめた獲物を見つめる獣そのもの。
もしくは、罠にかかった獲物を見つめる狩人のもの。
しかし、それを見る事のできないアンジェリークは
健気に自分の気持ちを明かしている。
「思ってはいるけど…でも、わかんない…。
 私じゃ……アリオスみたいに…できない…」
「やってみなきゃわからねぇだろ」


そっと唇を寄せて、そこにキスをする。
だけど、それからどうすればいいのか分からなくて困ったように彼を見上げる。
「別にお前の好きでいいんだけどな」
とても淫らな行為なはずなのに、そんな様子がなぜか微笑ましくて
上目遣いに見上げる少女の髪をくしゃりとかきまぜた。
「そうだな…俺がしてるようにやれよ?」
アルコールの力を借りてとはいえ、やっとその気になってくれたのだ。
ここでやっぱり止めるとは言われたくない(笑)
ヒントらしきことを言って促してやる。
「ん…」
たどたどしくも子猫のように懸命にしてくれる姿がさらに彼を昂まらせる。


「サンキュ」
「あの…ちゃんと…できた?」
かわいらしい問いにアリオスは笑って、少女を抱き寄せる。
「ああ。素質あるぜ?」
「………」
もう少しでヤバかった、と本気なんだか冗談なんだか分からない笑みで囁かれ
アンジェリークは彼の腕の中で瞬時に真っ赤になる。
「ちゃんと褒美はやらねぇとな」
「あっ…」

切なげな溜め息に混じって可愛らしい恨み言が零れる。
「ずる…いっ。いきなり……」
「ちゃんと予告しただろうが」
心の準備をする前に侵入してきた彼をそれでも受け入れる。
「…あ…あっ…や、アリオスっ…いつもより…んぅっ…ああっ」
言葉は途中で甘い悲鳴になる。
「今日はお前がしてくれたしな」
苦笑気味に呟いたがそれどころではない少女に届いたかどうか…。
頬を伝う涙に口接けてそれは綺麗な笑みを浮かべた。
「お前が火をつけたんだ」
今夜誘ったのは珍しいことにアンジェリークの方。
これは事実だが、少女に煽られるのはいつものことである。
もっともらしく彼女のせいにして遠慮なく交わる彼はやはりずるいかもしれない。
「アリ…オス…っ」
激しく突き上げられてアンジェリークは艶やかな声で鳴かされる。
静かな夜に響くのは本能を煽るような鳴き声と交わる淫らな水の音。
「も…だめっ…イっちゃ……」
「いいぜ。イけよ」
アリオスは少女の最も感じる箇所に触れながら囁いた。




「ん…やぁ…」
少女が思い出したなら恥ずかしくて死にそうなくらい求め合ったので
力尽きたとばっかり思っていた。
だがアリオスが離れようとした時、小さな声と細い腕が引き止めた。
「…離れちゃやだ…」
「アンジェ?」
「アリオス…もっと…。…ダメ?」
「くっ、んなわけねぇだろ」
潤んだ瞳でねだられて、拒む理由など彼にあるわけがない。
再び深くまで繋がって、アリオスはアンジェリークの頬にキスを贈った。
「珍しいな…お前がそんなに欲しがるなんて」
アリオスは唇を奪った後、華奢な首筋を辿りながら囁いた。
「んっ…わかんな…けど…。なんか…したくて…っ」
時折、甘い刺激に身体を捩りながらアンジェリークは吐息を漏らした。
「…呆れちゃう?」
見つめる瞳とそんな問いかけがあまりにも愛しくてアリオスは微笑んだ。
「俺としては嬉しい限りだぜ」
「きゃぅっ…」
アンジェリークの背に腕を回すと羽根のように軽い身体を抱き起こした。
「やん、急に体勢…変えちゃ…っ」
繋がったままの身体には刺激が強すぎる。
「たまにはお前が上になってみろよ?」
抗議の声もキスで遮って、さらに要求する。
「………もうなっちゃってるじゃない…。やっぱりアリオスずるい…」





「アンジェ…」
アリオスは自分の上で乱れた少女を抱きしめた。
すでに体力の残っていなかったアンジェリークには少々キツかったかもしれない。
「アリオス…」
彼の上で力尽きていた身体を少しだけ起こして移動する。
下りるのかと思ったアリオスは突然重ねられた柔らかい唇に一瞬驚かされた。
「大好き」
アンジェリークは微笑んでもう一度キスを贈った。
「どんなに言っても…しても…足りないくらい大好きよ」
真っ直ぐすぎる言葉にアリオスも微笑んだ。
「くっ、同感だな」
どうやったらこの想いを全部伝えることができるのか、見当もつかない。
さらさらの髪を梳き、そのまま手の平を少女の頬へと滑らせる。
愛しげにその輪郭をなぞり、唇に触れながら囁いた。
「どれだけ抱いても欲しいと思う」
「アリオス…」
そして金と翡翠の瞳を楽しげに輝かせて続きの言葉を紡いだ。
「限界まで挑戦してみようぜ」
いつも以上に素直な今日の少女なら付き合ってくれる。求めてくれる。
はたしてアリオスの予想通りにアンジェリークは
頬を染めながら淫らな誘いを受け入れた。





しかし、今までで一番燃えた夜だったにも関わらず…
アンジェリークはその時のコトをまったく覚えていなかった。
目覚めたアンジェリークは蒼白になり、
アリオスの方はなんとも言えない敗北感を味わった。
「もうお前、酒飲むな」
疲れたような彼の声にアンジェリークは「?」と思いながらも頷いた。
確かに記憶をなくすようなことはもうしたくない。
そんな彼女を確認しながらアリオスは改めて溜め息をついた。
「ったく…まじかよ」
「アリオス…?」
きょとんとする少女の問いかけに答えることなく、ただ寄りかかるように
彼女を抱きしめていた。
今までにないくらいの夜だったのに彼女が覚えていないとは…。
自分だけ覚えていても意味がないではないか。

「あ、あの…アリオス…ごめんね?」
あまりに珍しい彼の落胆ぶりにアンジェリークはうろたえた。
肩に乗る銀髪の頭と広い背中を抱きしめながら
自分の何が悪かったのかわからないが、思わず謝罪の言葉が出てしまった。
「悪いとは思うわけだ?」
「え…うん、たぶん…?」
顔を上げたアリオスの表情はすでにいつもの不敵な笑み。
謝ったのは間違いだったかしら…という思いが少女の頭を霞めた。
そしてそれが正しかったことをアンジェリークは知る。

「だったらかまわねぇよな」
「なに?」
「昨日の夜、再現しようぜ」
「え、ええ〜っ。なんで…」
一瞬後には押し倒されていた。
「思い出させてやるよ。お前だけ覚えてないってのもなんだしな」
少女の身体を知り尽くした手が絹のような肌の上を滑り、
囁くついでに耳朶を軽く噛む。
ぴくりと身を竦ませたアンジェリークは恐る恐る彼を見つめた。
「……もしかして…アリオス…怒ってる…?」
「怒ってねぇよ。
 せっかくお前がイロイロしてくれたのに綺麗に忘れちまったことなんてな」
「うそ! そのカオ絶対怒ってる〜」
怖いくらいに優しくて綺麗な笑み。
アンジェリークは半泣き状態で指摘した。
「私、いったいなにしたっていうのよ〜」
「だから教えてやるって…怒ってねぇって言ってんだろ?」
「ホント…?」
「ああ」
涙を唇で拭って言われた言葉にアンジェリークは念を押す。
アリオスは喉の奥で笑いながら頷いた。

「あれだけのコトをもう一度できるんなら…悪くねぇ」
「っ!」
至近距離で見つめる金と翡翠の魅了の瞳と楽しそうな危険な微笑み。
鈍いアンジェリークは今頃しまった、と気付いた。
「や、やっぱりいい! わかんないままでいい!」
「ばーか。この俺が逃がすわけねぇだろ」
起きあがろうとするアンジェリークをアリオスはキスで押さえ付けた。
強引なクセに優しいキスにアンジェリークの抵抗力がなくなる。
やがて視線を逸らせ、頬を染めながら呟いた。
「…思い出せるよう…努力はする…」
「くっ、いいコだ」


せっかく楽しんだ夜を忘れられるという手痛いカウンターを食らったものの
結局、美味しい思いを二度味わったアリオスの方がやはり一枚上手なのだろう。
元を取るどころかそれ以上頂かれたことに
記憶のないアンジェリークが気付くことはなかった。


                                        〜fin〜

 

本当にお待たせしました、さくらさま。

いや〜、「ここは私にはとても書けないから
あとは皆様の心の中で…」と逃げた部分の
リクでしたので、きちんと応えられなかったらごめんなさいです。
というか…今回も微妙に逃げてしまった気がしますけど(笑)

それにしてもアンジェ、表の方では
強かったですが、こっちではやっぱり
アリオスの方が強いですね。
というかずるい(笑)

これが私の精一杯です、さくらさま。
次のリクで成長していることを祈ってやってください。

 


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