Sunrise
新しい年を迎えて、数時間。 煩悩を払うはずの除夜の鐘の効き目もないようで…。 2人は、と言うよりアリオスは煩悩全開の時を過ごしていた。 昨年最後の日、アンジェリークお手製の年越しそばを食べ、 のんびりとマンションで過ごしていた。 もちろんアリオスに彼女を帰すつもりはかけらも無い。 新年の挨拶もそこそこに当然の成り行きで そういう展開になったわけだが…。 「ねぇ、アリオス。眠い?」 腕の中のアンジェリークが彼を見上げながら尋ねた。 「あ? 別に…。なんだ、まだ足りねぇか?」 にやりと笑ったアリオスの手が再び少女の肌の上を滑る。 「ち、違うっ。もう…あんなにしたじゃない」 「くっ、誘ってくれたんじゃねぇのかよ」 「違うもん…」 アンジェリークはアリオスに抱きしめられたままベッドサイドの 目覚し時計に腕を伸ばす。 「今から寝てもいいんだけど…どうせなら初日の出見に行かない?」 今の時刻なら日の出までそんなに待つ必要はない。 少し待ってマンションの屋上に行ってもいいし、 車で景色の良いところに行くことも可能だ。 「いいぜ。出かけるか?」 あっさり同意してくれた彼にアンジェリークはにっこりと微笑む。 「ありがとう、アリオス。大好きv」 そして彼の頬に羽根のようなキスを贈る。 その素直な仕種がとてつもなく愛らしい。 まだ暗い路上を車で走り抜け、着いた先は海岸沿いの一角だった。 何度かデートで来たことのある海。 その水平線を臨む場所でアリオスは車を停めた。 「うちの屋上からでも見えるけどな。 障害物の無い方がいいだろ」 ハンドルに凭れながらアンジェリークの顔を覗き込む。 「くっ、寝ててもいいぜ? その時になったら起こしてやるから」 うとうとしかけていたアンジェリークはふるふると首を振る。 「ね、眠くないもんっ。大丈夫」 自分から言い出した手前、ここで眠ってしまうわけにはいかない。 そんな風に思ってるのが顔に出ている。 アリオスはふっと優しく微笑むと少女の頬に触れた。 「アリオス…?」 そのまま身を乗り出す彼にアンジェリークはきょとんとする。 この状況、その後の展開を予想できるのだが前フリが無いと思った。 彼のこういう行動はいつも突然で前フリが無いにも関わらず… それに気付かない少女にも問題があるのだが。 軽く唇が重なり、離れてもアンジェリークは 頬を染めながらまだ首を傾げている。 「…なんで?」 したいからしただけ、今更理由なんか必要ない。 あえて理由をあげるとしたら『愛してる』からいつでも触れていたい。 それでも、素直には言えなくて。 アリオスは皮肉げな笑みを浮かべる。 「してたら眠くなんねぇだろ?」 「……っ」 アンジェリークは真っ赤になって何か言おうとする。 でも言えなくて彼を睨むことしかできない。 「…もぉ…」 数秒のにらめっこに負けたアンジェリークは苦笑する。 シートベルトを外して、アリオスの首に腕を回す。 アリオスはその華奢な身体を抱き締めてさらに深く口接けた。 「あ、アリオスっ、太陽出てきたっ」 閉じた瞼の向こうに光を感じた気がして水平線に目を向けると 太陽が顔を出してくるところだった。 毎日変わらず起こっている事なのになぜかこの日は特別で…。 明るくなっていく空ときらきら輝く海がとても綺麗で…。 どうしようもなく嬉しくなる。 その一番の理由は分かっている。 「アリオスと一緒に初日の出見られて良かった」 彼と一緒だから嬉しい。 「ああ、一年に一度くらいはこういうのもいいかもな」 少女と作る思い出はどれだけあっても決して多くはない。 初日の出を眺めながら約束した。 「来年もその次も…ずっと一緒に見ようね」 「ああ、そうだな」 〜fin〜 |
相変わらず甘いですねぇ…(苦笑) でもこういうのが一番書きやすいあたり なんか複雑な気分が。 シリアスより頭使わないので楽なだけかもですが。 というかアリオスさん…何も日の出近くまで起きてなくても…(笑) |