幸福と道徳の方程式

 3つの幸せ、「健康な体」、「やりがいのある仕事」、「喜びを分かちあえる仲間」。

 3つの心がけ、「きずつけない」、「いつわらない」、「むさぼらない」。

 前者が目標で、後者が方法と言っていいと思いますが、これらはうまく結びつくでしょうか。それとも矛盾してしまうでしょうか。

 健康な体のためには貪欲さを避けるべきなのは、誰しも身に覚えがあるでしょう。とは言え、禁欲ばかりでは息が詰まります。喜びには素直な方が心身のためによい場合が多いようです。ここで重要なのは体と心のバランスで、特に体の声に耳を傾けることがポイントになってくると思います。それが自分の体を「きずつけない」ことにつながるでしょう。

 やりがいのある仕事のためには、誠実さが重要です。自分のやりたいことをやる、ということも大事ですが、とかく楽をしがちな中で、ごまかしのない仕事をすることは、やりがいに直結します。また、傷つけない、貪らないことも無論、社会の中で仕事をしていくなら必要な心がけでしょう。

 ここで一つ、疑問が浮かびます。「むさぼらない」ことは、仕事そのものに対しては当てはまらないのではないか、ということです。勉強をするのでも、何かを作るのでも、ここまでやったからそれでいい、ということはありません。仕事に関してだけはとことん貪欲であるべきではないのか、ということです。このことについて、昔の道徳は中庸を重んじ、執着を戒める傾向がありますが、現代の私たちが選ぶ道徳としてはどうか、もう少し考えてみたいと思います。

 さて、喜びを分かちあえる仲間を持つためには、当然3つの心がけがいずれも大事になってきます。そして3つの間のバランスが最も難しいのも、これに絡んでくる場合です。相手を傷つけないことと、相手に率直であることと、どちらかを選ばなければならないとき、どうすればよいのか。

 また、自分の欲望を押し殺すことは、いつも人間関係にプラスに働くとは限りません。自分の気持ちに忠実に、節度を持って、相手を気遣いながらつきあえれば理想かもしれませんが、そう思い通りにはいかないものです。それどころか、そんな風に完璧にやり過ぎると、水くさい、なんて言われかねません。

 いかがでしょうか、色々難しい問題はありそうですが、3つの幸せと3つの心がけによる幸せの方程式、概ねいい方向で結びつくように思うのですが。


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