Midnight Romance −おまけ−

その夜…執務時間外に補佐官と王立研究院の主任、王立派遣軍の総司令官という
そうそうたるメンバーが密かに話し合っていた。
3人が囲んでいるテーブルにはちょこんと桃色の獣も座っていた。
彼は女王試験中の時とは違い、限られた人物にだけ必要な時には自分の姿を晒していた。
「1週間の予定を3日で…ですか」
主任が感心したように呟いた。
「驚くべき才能ですな」
総司令官もそう言って何度も頷いた。
「さて、問題です。次はどの出張に行ってもらいましょう?」
補佐官であるレイチェルがトランプのカードのように書類をばらっと広げた。
「私としてはこの惑星に行ってもらいたいと…」
そのなかの1枚を取り出し、レイチェルは提案した。
「そうですね…他のものを見比べてみる限り、ここが優先されるべきでしょうね」
「予測日程は10日間…」
同意する主任にレイチェルはコンピュータで弾き出された数字を告げた。

「私は5日間だと思う」
レイチェルが真っ先にそんなことを言った。
「そうですね…では、私は…6日間」
主任は先に言われたか、という顔でそう言った。
「お二人とも…まさか…いくらアリオスでもそんなに早くは…」
せいぜい8日だろう、と予想する総司令官に二人は顔を見合わせた。
「あのアリオスよ?」
「女王陛下と過ごす為、意地でも終わらせてきますよ」
女性陣二人のやけに自信のある表情に、彼は気圧されながら不思議そうに首を傾げた。
「で、アル?あなたは何日だと思う?」
レイチェルの問いに桃色の聖獣は3回鳴いた。
「3日〜〜?」
呆れたようにレイチェルが叫んだ。
「アル、今回『3日』って賭けて勝ったからって…」
もともとの設定日数が違うんだよ、と言われてもそれでいいとばかりにきゃう、と鳴いた。

アルフォンシアには確信があった。
アリオスが睡眠をとらずに動き続けて仕事に全く支障をきたさないのが3日。
4日目からは少々疲れが伴い、5日目から眠気と戦うようになる。
彼は結婚してから絶対アンジェリークのいないベッドになど入らない。現に今回もそうだったのだ。
そして、出張という責任ある立場なのでミスは許されない、となれば
これはもう必死で3日以内で終わらせてくるだろう。

彼の妻よりも彼のことを知っている宇宙の化身はぱたりと尻尾を振った。
「はいはい…じゃそれでOKね。急ぎの用じゃないし、しばらくしてからこれに行ってもらおうか」
ちなみに何が賭けられていたかというと、次に彼が出張に行っている間の
女王陛下とのティータイムである。
結婚してからというものの本格的に彼が皆に愛されている少女を独占するようになったせいである。
気の毒なのは、いいように使われようとしているアリオスか。
それとも出張が終わる度に大変な目に会うアンジェリークか。
本人達はそんな賭けが行われていることなど露知らず、相変わらずの
新婚バカップルぶりを披露しているが…。


ちなみに次のアリオスの出張中に女王陛下と楽しげにお茶をしていた青い髪の
美形青年は誰かしら、という女官達の噂を知ったアリオスによって
アンジェリークは『お仕置き』されたらしい。
やはり1番の被害者は彼女かもしれなかった。


                                          〜fin〜



賭けシリーズ第2弾、といったところでしょうか(笑)
(第1弾は『天使と見る夢』です)
おまけというか、裏でのレイチェル達の悪巧み(?)かな。
ふっと思いついたので書いてみました。

自分で書いておいてなんですが
なんかこの宇宙、平和そうですよね…。

 


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