『 梅の木 』

    鈴木 波な
 私は梅の花が大好きです。梅の花は人間にたとえれば、賢そうで、蕾が開きかけた形が何とも言えません。香りもよく、実に良い花です。
 東京からこちらに移ります時、庭の梅の木を一本持ってまいりましたが、時期が悪かったせいでしょうか、枯れてしまい、近所の農家から一本買求めましたが、又々虫につかれ枯れてしまいました。
 ところがなんと庭の片隅に小さな梅の木を見つけました。ほんの葉は6、7枚しか付いていませんでしたが、私は嬉しくてたまりませんでした。前の2本共家の前の方へ植えましたら枯れてしまいましたので、今度は裏へ植替えましたら、虫にも付かれず猿蟹合戦じゃないけれど毎年大きくなるのが楽しみでした。ぐんぐん大きくなり2、3年前から花が2、30位ずつつく様になり、今年はどの枝もびっしりつきましたので、嬉しく毎日裏へ出ては眺めて居ります。今年はせめて梅酒を作る位実ががつけばよいがと今から楽しみにして居ります。
 東京に居りました時は今頃になりますと毎日庭の梅の小枝に、うぐいすが来てホ−ホケキョと鳴いて居りましたが、こんな田舎に来てもうぐいすの鳴声も聞かれないのが残念です。

                                     第 8号(昭和48年)      
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