『 イナゴとり 』

    小幡 クニ   
 デパ−トの食品売場に、味付けしたイナゴがあって驚いた。
仙台で小学生の頃、姉や友達と袋を持って、イナゴとりに行った懐かしい思い出がある。黄金の波打つ稲田をイナゴがピョンピョンとんでいる。頬かむりをして両手を広げ、何とも面白い顔をした田舎のオッサンを思わせるユ−モラスな案山子が、私どもが夢中でイナゴを追っかけているのを笑って見ていた。沢山の雀が今が食べ込み時とばかり稲穂を啄んでいる。鳴子がカランカランと鳴った。一度はパッと飛立つが又舞下りてくる。すきとおった小川の水にメダカがすいすいと泳いでいる。色づいた柿が美しい。誠に長閑な風景である。
 持帰ったイナゴはねえやのもとやが上手に味付けしてくれて、喜んで食べたことを覚えている。今デパ−トで売っているのを見るとイナゴは稲を食べているから定めし栄養があるからでしょう。
 イナゴとり、ホタル狩り、栗拾い等四季折々の楽しみは尽きない。今の子供たちにこのような楽しい思いをさせたらどんなに喜ぶことでしょう。
 懐かしい子供の頃の思い出である。

                                     第10号(昭和48年)
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