『 夕食前のひと時 』

   村井 たみ  
 私の部屋に今年高校に入学する孫が入って来てコタツの上にある眼鏡をかけ、ヤアこの眼鏡かけるとすごくよく見えるなァと申します。
私は驚いて、兄ちゃんそれは近眼の眼鏡よ、あなた近眼になったのかしら、困るじゃない気をつけてください。と話のやりとりをしていますと、今度は私の顔を見て、おばあちゃんの顔すごい塩だらけだねと申します。私はびっくり。
 ここで一寸話が飛躍しますが、私は洗顔した後皮膚のつっぱりを防ぐ意味でアストリンゼンを使用しているんです。それが時々鼻の穴のまわりに白く塩がふいたようになることがあるのです。気がついた時は拭くんですが忘れているほうが多いのです。これはきっとアストリンゼンの混合物が鼻息で乾燥されて鼻穴のまわりに白く残るのではないかと私は思っているのです。
 このようなわけで今孫から塩だらけと言われて私は、ァそうだ、さっきつけたっけ又白くなっているのだなァと思い、孫に、お兄ちゃんそんなにおばあちゃんの顔塩だらけ、 と聞きますと、孫はすかさず、そんなばかなことないだろう。いくらおばあちゃんがしわくちゃの梅干おばあさんでも塩まで吹かないでしょう。 僕の言ったのはしわだらけだと言ったんだよ。まったくつんぼの早耳でいやになっちゃうですって。
 何のことはない私は口をポカンとあけたままテレクサ笑いでごまかしてしまいました。みんなもそれにつられて笑い出してしまいました。

                                     第11号(昭和49年) 
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