『 ある晩の出来事 』

宮坂 里ゑ   
 私の家のテレビの上に大きな水槽があってその中にもう何年となく生き永らえている金魚が8匹、毎日楽しげに泳ぎまわって私達の目を楽しませてくれます。
 ある晩のこと、勉強をしていた孫が11時頃突然 『 水槽の水が漏れているようだ 』 と言いました。『 そんな馬鹿なことを 』 と言いながらふと見ると真実に漏れているらしく下の絨毯が大分ぬれていました。おどろいて総動員で漸く玄関まで水槽を持って行きました。
さてどうしよう。水槽の水はその日の夕方かえたばかりなのでそれから6時間すぎた現在3センチ位少なくなっている。この分ならあすの朝まで位大丈夫だろうと皆の意見が一致したので水槽の水を一杯にしてねることにしました。
 朝5時10分に目がさめました。早速玄関へ行って見ますとさあ大変。
水は殆んどなくなって金魚は皆横になってあっぷあっぷしています。夢中で外にとび出して庭の水道からバケツで12、3杯運びました。やっと一杯になったので一安心と思う間もなく、今度は止めどもなく水が漏れるようになりました。
一難去って又一難。今度は大バケツに水を一杯入れてそばにおき、金魚をすくい始めたところが右へ左へと逃げまわってなかなかすくえないのです。漸く全部バケツに入れ終わってやれやれと思った時には私の方が、くたくたになってしまいました。
 あの晩突然起こった金魚騒動の一幕でした。

                                  第12号(昭和49年)
 
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