『 多 摩 川 』

   渋谷 アキ  
 多摩川は私の故郷の様な所です。大森に生れ田園調布で育った。
今は江の島に行ってしまった鉄の塔の山下が多摩川の流れで、中原街道には渡し場があって人は三銭、牛車は六銭で朝早くから舟で渡って東京の方に行きます。
7月には豪華な花火大会があって私が手伝っていたお店の前など人でいっぱいでした。日曜、祭日は忙しいが雨の日などはコトリ座の芝居や千人風呂で楽しい事がいっぱいありました。
 今日(こんにち)の多摩川の河原には野球場やゴルフ場や公園が出来て人が沢山出て居ます。川上に行くと住宅やマンションなど見渡す限り立並んでいます。等々力渓谷や不動尊の森もま近です。
 9月2日栃木からの帰り交通公園が見えない程水が出ていました。こんな事初めてなのでびっくりしました。テレビのニュ−スで堤防の決壊19戸の家が茶色の濁流に消える家がまるでスロ−の映画の様でした。狛江の知人の家に見舞いに行きましたが今更水の恐ろしさが身にしみました。途中二子玉川に寄り玉川大師にお参りしました。ここの大師様は地下にあって四国八十八ヶ所・西国三十三ヶ所の仏像があって遠く千葉の方から団体でお参りに来るそうです。小さなお堂の様ですが中はバス2台の人が休める位広く、住職が5年がかりで地下を掘り仏像を安置したとの事です。私達は玉川大師に3回ばかりお参りしました。地下を下りると心の底から何とはなし気持が落着き思わず手を合せる様な姿勢になります。
 皆様も場所はお近いですからお参りをおすすめ致します。

                                     第14号(昭和50年) 
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