『 随  想 』

   佐伯 文美乃   
        もがり笛会長の魂呼び去りぬ
 私の家の前は、8メ−トルの道路の前方は見渡す限りの枯芒の原です。
折角土地造成をしてありながら、値上りを待って売らないとかで、今は芒と雑草に占領され、その枯芒の茂みから、1月30日早くも雲雀の初鳴き。
        春待てず突如誇らに揚げ雲雀
        立春の光の色に驚きぬ
        春の空遠く白雲軽ろやかに
        早春や球根の芽背伸びして
 今は花も途切れてさびしい庭に、早咲きの水仙が一月初めから気高い姿に次々と咲き、ひときわ美しい風情です。
        如月や庭の水仙女王のごと
        雛祭り吾子と睦みし日や遠く
        何語るひいなの顔子等の目
        紅梅の風に遊びて散る風情
        囀りや席ゆずられる歳となり
        囀りや身をも心も声にして
 1月30日に初鳴きの雲雀も、今は声高らかに、上手に、わが世の春とばかり。

                                     第17号(昭和51年)
 
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