『 巣立ち 』

秋山 栄     
 チイチイチイと母親からエサをねだる可愛いゝ声、今年も雀のひなが巣立ってゆきます。毎年巣作りに来て卵をかえし、梅雨がすぎると巣立ってゆきます。
 丁度5、6年前のことです。風呂の煙突の上に巣作りしたのでしょう、ヒナが落ちて来て、3日2夜、夕方と明方になると親に助けを呼ぶ悲しい声になやまされました。助けたい!とコンクリ−トをこわして助け出した時は力つきていました。
 今度は安全なところで育てゝもらい、と言ったのが通じたのか、それからはベランダの軒の下で、毎年同じ雀か、それとも娘か孫か、毎年巣作りして巣立ってゆきます。そして子供を連れてベランダに遊びにも来ます。毎朝あゝ今日も元気ね、早く大きくなるのねと声をかけたくなります。

                                     第25号(昭和53年)
 
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