戸田社会保険労務士事務所

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割増賃金の支払い方

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割増賃金を適正に支払っていないリスクは突然襲ってきます。定額支給について規定する際のポイントなどをご説明します。

割増賃金の支払い方
解雇トラブルが割増賃金問題へ発展

東京都近郊の卸売り会社A社(従業員40名)は配送担当者Bさん(50歳)が配送業務中に数回居眠り運転(助手が気づき大事に至らず)、通勤に使用する自家用車が車検切れ・自賠責保険未加入等で再三注意をしましたが態度を改めないことから1ヶ月の予告期間をおき解雇した。Bさんは予告日の翌日から出社しなくなりました。後日、Bさんは過去2年分の残業代約200万円を支払うよう要求してきました。支払わなければ監督署に申告し、全従業員分を支払わせると言ってきました。A社は割増賃金の計算において1時間30分/日分は計算に入れていなかったのです。過去2年分となると全従業員で6,000万円を超える金額になります。最終的にA社はBさんに解決金を支払い和解しました。

最近このようなトラブルが増えています。割増賃金を適正に支払っていないリスクはこのような形で突然襲ってきます。また、最近は労働基準監督署から割増賃金の支払を是正勧告・指導されるケースが増えています。

東京労働局18労基署、残業等の割増賃金を半年間に21億円の支払を指導

〜平成15年度上半期〜 (東京労働局発表 平成15年11月28日)

東京労働局では、平成15年4月から本年9月までの半年間(平成15年度上半期)に、管下18労働基準監督署(支署)が行った臨検監督において、時間外労働(残業)等に対する割増賃金が適正に支払われていないと認められた事案に対し、労働基準法第37条違反としてその是正を勧告・指導した結果、1事案当たり100万円以上支払われたものの状況を次のとおり、取りまとめた。

(1)臨検監督の結果、割増賃金支払に係る勧告・指導の対象となった企業数は102企業であり、事業場数は636事業場であった。平成14年度下期の対象が66企業であったことから、企業数で1.5倍強となった。割増賃金の支払を受けた労働者数は、102企業、636事業場の合計で17,086人であった。

(2)支払総額は約20億9千万円であり、平成14年度下期の22億7千万円には及ばないものの2期連続して20億円を上回った。1億円を超える支払となったものが3事案となっている。

この背景には厚生労働省の過労死・過労自殺対策があります。厚生労働省は平成13年以降、過労死防止の観点から「労働時間の適正把握基準」、「過重労働による健康障害防止総合対策」を策定しました。しかしながら、企業のリストラ加速などによりサービス残業が深刻化し、社会問題となってきました。そこで平成15年に「賃金不払残業の解消を図る指針」、「賃金不払残業総合対策要綱」を策定し、監督指導を強化、特に重大悪質な事案については、司法処分を含め厳正に対処する方針を示すに至りました。(基準、指針等の詳細は下記をクリックしてください。)

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について
(平成13年4月6日 基発第339号)

過重労働による健康障害防止のための総合対策について
(平成14年2月12日 基発第0212001号)

賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針について
(平成15年5月23日 基発第0523004号)

賃金不払残業総合対策要綱について
(平成15年5月23日 基発第0523003号)

企業としては従業員の健康を守るために過度の長時間労働を行わせてはなりません。そう負担を感じない、ほどほどの残業にする必要があります。一定の時間内で成果をあげる時代です。残業指示書などを使い適切な労働時間管理を徹底し、月30時間程度になるように対処していく必要があります。

私は今まで200社を超える企業の就業規則を拝見し、80社の就業規則を作成・変更してきました。しかし、最近ある企業の賃金規程を拝見してびっくりしました。「基本給には時間外手当を含むものとする。」という規定だったのです。そしてこの企業は入社の際に従業員に十分説明し周知運用していました。割増賃金は法定の割増率で支払うと規定しながら、支払っていない企業が多いことを考えますと、なんだかあっけらかんとして清々しい気分になりました。

しかしながら、「基本給には時間外手当を含むものとする。」だけでは、従業員との約束事にはなるかもしれませんが、国と企業の約束事である労働基準法には間違いなく違反しています。では、どのように規定すればよいのでしょうか。

割増賃金定額支給については、次の点に注意して規定していくことがポイントとなります。

  1. 通常の賃金部分と時間外・深夜割増賃金部分が明確に区分できること
  2. 通常の賃金部分から計算した実際の時間外・深夜割増賃金に対し不足が出る場合は、その不足分を支払うこと
参考にいくつかの裁判例をご確認下さい。

割増賃金定額支給に関する判例

○徳島南海タクシー未払賃金請求(控)事件 平成11年7月19日判決 高松高裁平成7年(ネ)367号、なお、会社の上告は、最高裁に受理されなかった。

労使間で、時間外・深夜割増賃金を、定額にして支給することに合意したものであれば、その合意は、定額である点で労働基準法37条の趣旨にそぐわないことは否定できないものの、直ちに無効と解すべきものではなく、通常の賃金部分と時間外・深夜割増賃金部分が明確に区分でき、通常の賃金部分から計算した時間外・深夜割増賃金との過不足額が計算できるのであれば、その不足分を使用者は支払えば足りると解する余地がある

○千里山生活協同組合賃金等請求事件 平成11年5月31日 大阪地裁平成9年(ワ)693号

被告〔会社〕は役職手当(職務手当、業務手当)が時間外手当を含むものであると主張するところ、役職手当等は時間外賃金以外のものを含むものであるが、時間外賃金を固定額で支払うこと自体は、その額が労基法所定の割増賃金額を超えるかぎり、これを違法とすることはできないものの、その場合でも、時間外割増賃金としての労基法所定の額が支払われているか否かを判断できるように割増賃金部分が明確でなければならない。しかるに、本件では、右役職手当等のうち、いかなる部分が時間外割増賃金に該当するかを明らかにする証拠はないから、被告の右主張は採用できない。

○関西事務センター賃金等請求事件 平成11年6月25日判決 大阪地裁平成10年(ワ)1989号

被告〔会社〕は、原告〔課長就任者〕に時間外勤務手当を支給しなくなったのは部門長以上の役職者には時間外勤務手当を支給しないとの就業規則によるものであると主張している。(略)被告が就業規則や賃金規程で定めている時間外勤務手当が、労働基準法が法定労働時間超過の労働に対して支給することを強制している割増賃金の趣旨であることは明らかであり、さらに、これを所定労働時間超過の労働に対してまで支給することとしたものであり、その点で、労働基準法による保護以上に拡張したものである。割増賃金の支給を命じる労働基準法の規定は強行法規であるから、単なる合意によってこれを不支給とすることは許されないし、部門長以上の役職者であることを理由に、割増賃金を含む時間外勤務手当を支給しないとするのであれば、そのような取扱いが有効とされるためには、右役職者が、同法41条2号に言う監督若しくは管理の地位にあるものに該当するか、あるいは右役職者に実質的にみて割増賃金が支給されていると解される場合でなければならない。(略)課長に就任したことによって原告が従業員の労務管理等について何らかの権限を与えられたとの主張立証はなく、(略)地位の昇進に伴う役職手当の増額は、通常は職責の増大によるものであって、昇進によって管理監督者に該当することになるような場合でない限り、時間外勤務に対する割増賃金の趣旨を含むものではないというべきである。仮に、被告としては、右役職手当に時間外勤務手当を含める趣旨であったとしても、そのうち時間外勤務手当相当部分または割増賃金相当部分を区別する基準は何ら明らかにされておらず、そのような割増賃金の支給方法は、法所定の額が支給されているか否かの判定を不能にするものであって許されるものではない

 

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